■自然素材 自然素材というだけのくくりでは、人の手を介さずに自然にあるものをそのまま使用するのであれば、本当に自然素材と呼べると思いますが、建築に使用する自然素材のほとんどは、人の手によって加工されているものばかりです。例えば、無垢のフローリングでも山から木を切って、中にはその後防虫処理をしているものもあります。伸び縮みしないようにウレタンを注入している場合もあります。漆喰は、石灰岩を切り出し、高温で焼成し、細かくしたものに水を加えて乾燥させ、という工程の後、各メーカーによって色々な添加物を入れられる場合があります。 ■石油もコンクリートも自然素材? 別の角度から考えてみると、石油もコンクリートも自然の中から生まれたものです。石油は大昔、動植物が堆積してできたもので、コンクリートは漆喰と同様石灰岩に粘土、珪石、酸化鉄、石膏を加えてできています。こう考えると化学物質も元はといえば、全て自然のものからできているということになります。ちなみに私が学生の頃、安藤忠雄氏が「コンクリートは自然素材です」と言われたのが、今でも鮮明に覚えています。当時は、何をこじつけているんだ? と思っていましたが、彼は、間違っていなかったのですね。 ■化学物質 一方、「化学物質」を考えると、体に良くないと想像されがちですが、化学物質はというと、「化学式で表現できるもの」となるので、この世の中に存在するものは全て化学式で表現でき、当然、空気や水などの自然素材も化学式で成り立っていますので、当てはまりません。 ■体に害が有るか無いか? 化学物質と言うと体に害があるイメージは大きいですが、工業製品を例に見ますと、プラスチックといわれるものの中に「ポリエステル」がありますが、これはペットボトルなどの原料で、燃えても水と二酸化炭素にしかならないものもあります。これに対し、塩化ビニールやウレタンなど燃えると体に害があるものや化学接着剤や塗料など揮発すると害があるものなどがあります。 自然素材でも毒のあるものとして、食べると毒や揮発すると毒なもの、鎮痛剤、漢方薬、麻薬というものもあります。アルコールやホルムアルデヒドなどの一時的な中毒の場合は、肝臓や酵素によって分解され、尿として排出されます。 ■有機と無機 自然素材の中で有機と無機という分け方もあります。有機とは、基本的に生きているもの又は生きていたものですが、詳しくは「炭素(C)をもつ生体が産出する化学物質」とされています。有機物は、自ら何らかの物質を発しますが、無機物は基本的に発しません。そうすると、揮発するものは有機物であるので、木からも揮発するものがあります。針葉樹は特に自分の身を自分で守ろうとしますので、防虫成分を発しています。一方、無機物といえば、鉄・ガラス・石・漆喰・アルミ・ステンレス・亜鉛などがありますが、自ら揮発するものはありません。ただ、無機物の中には体内に入るととても危険なものもありますので、注意が必要です。 ■天然、人工に関わらず、体に害のあるものは使わない 無添加住宅では、基本方針の中で「天然、人工にかかわらず、無害なものを使います」とうたっています。自然素材の毒を研究した開発者の言わんとするところですので、自然素材というイメージだけで選ぶことはとても危険です。ゆえに、自然素材と化学物質のちがいという分け方では難しいということになります。 |
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